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特別インタビュー:櫛田神社

水たきは『人と人をつなぐ懸け橋』

(お話をお伺いした方) 櫛田神社 権禰宜 髙山定史様

博多の総鎮守として、「お櫛田さん」の愛称で広く市民から親しまれている櫛田神社。全国的にも広く知られる博多の3大祭のひとつ、博多祇園山笠は、この櫛田神社の祇園神(素盞嗚命・スサノオノミコト)に対する氏子の奉納神事です。
博多祇園山笠の直会(なおらい)では、決まって「水炊き」が食されています。
「お櫛田さんと水炊き」の深い関係について、櫛田神社の権禰宜 髙山定史様にお話を伺いました。

博多祇園山笠の直会では、なぜ毎回「水炊き」が食されるのでしょうか?

直会で「水炊き」が出され始めたのは、いつからか、というのは実際には分かっていません。かなり昔から脈々と受け継がれてきた食文化だと思います。神社では、四つ足を食することが御法度です。しかし、重い山笠を昇く男衆たちは、体力をつけなければいけません。そこで、「鶏肉」が選ばれたのだと思います。
また”手早く簡単”に調理のできる「水炊き」は、博多の人の気質にも合っていますね。

櫛田神社 権禰宜 髙山定史様

櫛田神社の水炊きには、特別なレシピがあるのですか?

「水炊き」が美味しいお店というのは、決まって「ぽん酢」にこだわって美味しいですよね。「櫛田の水炊き」で使用する「ぽん酢」も、すごくこだわっており美味しいです。

そのこだわり(作り方)については、神社の中でも一部の担当の者しか知らず、その作り方が代々受け継がれています。まさに秘伝のレシピで公開されることはありません。

櫛田神社では山笠の時期以外にも水炊きが食されることがありますか?

櫛田神社では、10月の博多おくんち(秋祭)、12月の恵比須大祭、2月の節分大祭、どの祭の終了後にも直会で「水炊き」を食します。まさに一年を通して、祭の後には「水炊き」を囲みながら互いの絆を深めるのです。

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櫛田神社にとって「水炊き」とは?

昔から神社は、信仰の場、伝統文化の誇示、そして地域との交流の場としての役目を果たしてきました。交流の場に関しては、今でいう地域の公民館のようなイメージですね。

神社では、祭を斎行することにより、信仰や伝統文化を守り、継承していきます。そして祭が終わると直会で、決まって水炊きを囲み、地域の発展のための情報交 換や町の運営の在り方を真剣に議論したり、身近な話でにぎわったりして、交流を深め地域のコミュニケーションの場にもなっているのです。

また博多祇園山笠の直会には、承天寺と東長寺の住職さんもいらっしゃいます。神社にお寺の住職さんがいらっしゃって、祭に参加する男衆とともに水炊きを囲む光景は博多ならではと思います。
他では見られないそうした珍しい情景は、「水炊き」が「人と人を繋ぐ」重要な役目を果たしていることを感じさせるものでもありますね。